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バーチャルオフィスの運営・利用は違法なの?怪しいと言われるのはなぜ?

高橋 暁人

高層ビル

バーチャルオフィスについて調べていると、違法との情報が目に付きます。こうしたことから、不安に感じているのではないでしょうか。

結論から言うと、バーチャルオフィスの利用自体に違法性はありません。ただ、一部の用途に使用すると法に触れる可能性があります。

この記事では、バーチャルオフィスの違法性と利用時の注意点を紹介します。後半では信頼できるサービスの選び方もまとめていますので、ぜひご覧ください。

バーチャルオフィスを運営するのは違法なの?

バーチャルオフィスを運営すること自体に違法性はありません。なぜかと言うと、運営を禁止する法律が存在しないためです。

実際に、 DMMバーチャルオフィス GMOオフィスサポート など、大手の運営会社がサービスを提供しています。また、 みずほ銀行 住信SBIネット銀行 GMOあおぞらネット銀行 などの民間金融機関と公式的に提携している事業者も存在します。よって、バーチャルオフィスを運営すること自体は社会的に認められており、正しく運営していれば違法ではないと言えます。

バーチャルオフィスを利用するのは違法なの?

ここでは、バーチャルオフィスの利用が違法なのかを紹介します。結論から言うと、住所の用途によっては、違法になる可能性があります。

住民票の住所として利用するのは違法

住民異動届

バーチャルオフィス住所を住民票に利用するのは違法です。なぜかというと、民法にて、住民票に利用できる住所が「生活の本拠となる住所」と定められているためです。

バーチャルオフィスには生活の拠点が存在しないため、住民票の住所として利用できません。以下、根拠となる法律です。

第十条 市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。

e-Gov法令検索「地方自治体法」

(住所)
第二十二条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。

e-Gov法令検索「民法」

なお、バーチャルオフィスの住所を住民票へ利用すると、生活の本拠ではないとして虚偽の届出にあたる可能性があります。この場合、5万円以下の金銭罰が課せられるため注意が必要です。

第五十二条 第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。

e-Gov法令検索「住民基本台帳法」

事業用として利用するなら一部を除いて違法ではない

パソコン作業のビジネスマン

法人や個人事業主が事業目的で使用する場合は、基本的に合法です。商業登記法では、バーチャルオフィスに関連する本店所在地の制限がないため、たとえ自宅以外の借りた住所だとしても申請が可能です。また、個人事業を開業する際の開業届にも、バーチャルオフィス住所を使用できます。

なお、ネットショップ運営で公開が定められている「特商法(特定商取引法)」の表記にも、バーチャルオフィスの住所を利用できます。これは、消費者庁が公開する「特定商取引法ガイド」に、根拠となる以下の記述があります。

私は個人事業主ですが、バーチャルオフィス等の住所及び電話番号を表示することは可能でしょうか。

住所及び電話番号について一定の要件が満たされる場合は、バーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられます。

特定商取引法ガイド「通信販売広告Q&A」

「住所」については、法人及び個人事業者の別を問わず、現に活動している住所(法人にあっては、通常は登記簿上の住所と同じと思われる。)を正確に表示する必要がある。いわゆるレンタルオフィス等であっても、現に活動している住所といえる限り、法の要請を満たすと考えられる。

特定商取引法ガイド「特定商取引に関する法律・解説(令和4年6月1日時点版):第2章第3節」

バーチャルオフィスの事業利用が違法になる2つのケース

ここでは、バーチャルオフィスの利用が違法になる2つのケースを紹介します。業態別の注意点を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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1.事務所要件がある業種の場合

ミーティングルーム

事務所要件がある業種の場合は、バーチャルオフィス住所を使用すると違法になる可能性があります。事務所要件とは、事業に必要な許認可を取得する際に満たさなさければならない事務所に関する規定のことです。

一般的に、バーチャルオフィスで満たせない事務所要件は、以下の3つです。

  • 実態のある事務所・営業所を用意すること
  • 専用の出入り口を設けていること
  • 壁で仕切られた個室を設けていること

バーチャルオフィスは、物件ではなく住所のみを借りるサービスのため、上記の要件を満たせません。許認可の取得に事務所要件を定める代表的な業種は、以下のとおりです。

  • 士業(税理士、司法書士、行政書士、弁護士など)
  • 不動産業・宅建業
  • 建設業
  • 職業紹介業
  • 人材派遣業
  • 探偵業
  • 廃棄物処理・不用品回収業
  • 中古品販売・リサイクルショップ
  • 風営法に触れる業種
  • 金融商品取引業者

また、事務所要件がない場合でも、バーチャルオフィスの規約で事業利用が禁止されている業種もあります。住所を借りる際は、事務所要件と規約を確認しましょう。

2.同一住所に同一の商号(法人名)がある場合

法人設立届出書

法人の方で、同一住所地に同一の商号(法人名)がある場合は、違法または登記ができません。以下、商業登記法で定められた条文です。

(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
第二十七条 商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

e-Gov法令検索「商業登記法」

バーチャルオフィスの住所は、多くの事業者に利用されています。とくに、利用者の多いネットショップやIT系などの業態・業種では、商号が一致するリスクが高まります。

バーチャルオフィス住所で法人登記をする場合は、法務省の「オンライン登記情報検索サービス」を活用して同一商号を避けましょう。

なお、一部で契約者にしか住所地を公開しないサービスもあります。この場合は、バーチャルオフィスへ直接問い合わせて、住所の公開や商号の検索を依頼しましょう。

バーチャルオフィスが違法・怪しいと言われるのはなぜか?

夜のオフィスビル風景

なぜ、バーチャルオフィスが違法・怪しいと言われるのでしょうか。ここでは、その理由を紹介していきます。

過去:犯罪の拠点として使われることが多かったから

バーチャルオフィスが怪しいと言われる一番の理由は、過去に犯罪の拠点として使われた経緯があるためです。業態が誕生した当初は法令制度が整備されていなかったため、代表者の身元や事業実態を十分に確認しないまま住所を貸し出す事業者が多く見受けられました

結果、違法な情報商材の販売や、投資詐欺の拠点目的での利用が増え、メディアで頻繁に取り上げられるようになりました。当時の悪いイメージが引き継がれ、一部で「バーチャルオフィスが怪しい」「信用できない」と言われています。

ただ、2008年には「犯罪収益移転防止法」が施行され、契約時の本人確認が必須になりました。また、バーチャルオフィス事業者の審査基準も厳格化されています。

現在:マルチ商法や情報商材の住所として使われることがある

しかし現在でも、TwitterなどのSNSで「バーチャルオフィスが怪しい」と言われることがあります。これは、マルチ商法や情報商材の販売など、いわゆる”グレーゾーン”のビジネスを行う事業者の住所に使用されることがあるためです。

バーチャルオフィス各社は、自社の評判を守るために、利用規約にてそのような目的の利用を禁止しています。しかし実際には、利用者の事業実態を把握するのが難しいのが現状です。

たとえば、契約審査時の事業内容をWebデザインにし、無事に通過したとします。その後、ギャンブル関連事業で住所利用しても事業者が把握することは非常に困難なのです。このことから、どのバーチャルオフィスであっても、グレーゾーンビジネスに利用されるリスクをはらんでいるのです。

一方、副業や開業をする人の増加により、正当な理由でバーチャルオフィスを利用する人が増えているのも事実。現在は怪しいと言われることが多いですが、将来的には市場環境が整備され、社会的に広く認められていくと考えられます。

バーチャルオフィスの違法性に関してよくある質問

ここでは、バーチャルオフィスの違法性に関するよくある質問と回答を紹介します。

ネットショップの特商法に記載することは違法ですか?

バーチャルオフィス住所を、ネットショップの特商法に基づく表記に使用しても違法性はありません。本来は、実際に活動している拠点の住所や電話番号を記載しなければなりません。

しかし、一般社団法人クリエイターエコノミー協会が消費者庁と協議を重ね、以下の要件を満たす場合はバーチャルオフィスの住所と電話番号を公開できるという見解が出されました。

・ 個人事業者がプラットフォーム事業者の住所及び電話番号を表示する場合、当該個人事業者の通信販売に係る取引の活動が、当該プラットフォーム事業者の提供するプラットフォーム上で行われること
・ 個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィスの住所及び電話番号が、当該個人事業者が通信販売に係る取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、当該個人事業者と当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者との間で合意がなされていること
・ 個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者は、当該個人事業者の現住所及び本人名義の電話番号を把握しており、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者と当該個人事業者との間で確実に連絡が取れる状態となっていること

特定商取引法ガイド「通信販売広告Q&A」

要約すると、以下のとおりです。

  • バーチャルオフィスが正常に運営されていること
  • バーチャルオフィスがネットショップ運営者の自宅住所・電話番号を把握していること

バーチャルオフィスの申し込み時には、本人確認書類や電話番号を提出します。したがって、一般的には契約の完了段階で、上記の要件を満たすことになります。

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メルマガの住所として記載することは違法ですか?

法律や政府による解釈において、メルマガの住所にバーチャルオフィスを利用できる旨の記載は見当たりませんでした。特定電子メール法では、「送信者の住所」としか説明されておらず、これがどの範囲まで大丈夫であるかの解釈がないからです。

一 当該送信者(当該電子メールの送信につき送信委託者がいる場合は、当該送信者又は当該送信委託者のうち当該送信に責任を有する者)の氏名又は名称
二 前条第三項本文の通知を受けるための電子メールアドレス又は電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号であって総務省令・内閣府令で定めるもの
三 その他総務省令・内閣府令で定める事項

e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」

二 法第四条第一号に規定する者の住所

e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」

ただし、近しい法律である「特定商取引法に関する法律」の消費者庁の見解では、一定の要件を満たせばバーチャルオフィス住所の利用が可能であるとの記載があります。通例に従うなら、メルマガに記載してもよいと考えることが可能です。

ただし、メルマガではなくダイレクトメール(DM)の返信先住所として使用することは、多くの事業者が利用規約にて禁止しています。ダイレクトメールの返信がバーチャルオフィスへ大量に届くと、事業運営に支障をきたしてしまうからです。

バーチャルオフィスで住所を利用する際は、法律のほか、事業者に迷惑がかからないかどうかもしっかりと考えるようにしましょう。

取引先から反社認定されてしまうことはありますか?

コンプライアンスチェックの方法は、企業によって異なるため一概には言えません。ただし、一般的には住所以外の項目も調査して総合的に判断するため、反社と認定される可能性は低いです。

もし不安な場合は、あらかじめバーチャルオフィスを利用している旨を伝えておくのがおすすめです。バーチャルオフィスを怪しいと考える人も一定数存在するため、相手側の不安を事前に解消することにつながります。

注意!違法ではなくても規約違反になる利用方法がある

注意点のイメージ

たとえ違法でなくても、住所の用途によっては規約違反になる場合があります。多くのサービスでは、以下の用途で住所を利用することを許可または禁止しています。

利用・記載OKな例利用・記載NGな例
・ホームページ
・名刺、チラシ
・パンフレット
・登記用の住所(本店・支店)
・郵便物発送時の発送元住所
・ネットショップの特商法(特定商取引法)の住所
・大量の返送が予想される、DM(ダイレクトメール)の返送先住所
・住民票の住所
・携帯電話やインターネット通信などの契約住所
・個人名義・用途での銀行口座やクレジットカードなどの申込み住所
・風俗関連営業、マルチ商法、ギャンブルなど
・宗教活動

なお、一部のバーチャルオフィスでは、住所の記載方法を規定しています。たとえば、Webサイトへの住所記載を、画像ファイルでアップロードするよう指定しているなどです。

とくにネットショップを運営する方は、画像ファイルでの掲載に対応していないネットショップ作成サービスがほとんどなので、バーチャルオフィスを選ぶ際に利用規約を必ず確認しましょう。

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適法で信頼できるバーチャルオフィスを選ぶポイント

ここでは、適法かつ信頼できるバーチャルオフィスの選び方を紹介します。意識すべきポイントは、以下の3つです。

  • 本人確認や取引確認を行っているか?
  • 過去に犯罪利用された形跡はないか?
  • 社会的な信用力のある企業が運営しているか?
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本人確認や取引確認を行っているか?

3点の身分証明書

まず、必ずチェックすべきは、本人確認や取引確認の有無です。なぜかというと、「犯罪収益移転防止法」で実施が規定されているためです。

つまり、本人確認・取引確認を行わないバーチャルオフィスの運営会社は、違法事業者に該当します。以下、犯罪収益移転防止法の条文です。

一 本人特定事項(自然人にあっては氏名、住居(本邦内に住居を有しない外国人で政令で定めるものにあっては、主務省令で定める事項)及び生年月日をいい、法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)
二 取引を行う目的
三 当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容
四 当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときにあっては、その者の本人特定事項

e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」

上記の条文で定められた確認内容は、以下のとおりです。

  • 事業の代表者(法人の場合、実質的支配者)の名前・住所・電話番号
  • 法人名・本店または事務所の住所(法人のみ)
  • バーチャルオフィスの利用目的
  • 個人の場合は職業・法人の場合は事業内容

また、必要に応じて追加で情報や書類を請求されるケースもあります。

過去に犯罪利用された住所ではないか?

調査するビジネスマンと調査報告書

借りる住所の信用に傷がないかも確認しましょう。仮に、過去に犯罪へ利用された住所を借りてしまうと、取引先や金融機関のコンプライアンスチェックに引っかかる可能性が高くなります。

また稀なケースですが、評判の悪い個人事業主・法人が住所を使用している場合もあります。もし、取引先の担当者や顧客が住所を検索した際に、悪評の記事が目に入れば、たとえ無関係だとしても不信感を持たれかねません。

バーチャルオフィスや拠点を選ぶ際は、住所に傷がないかを調査しましょう。なお、住所地を公開していないバーチャルオフィスの場合は、直接問い合わせるのがおすすめです。

社会的に信頼できる企業が運営しているか?

ビル

運営会社の社会的な信用力も大切です。信用力のある会社は、コンプライアンスを遵守する体制が整っているうえに、高い資金力を持ち、事業の撤退リスクが低いためです。

一般的に、企業の信用は、以下の項目で判断できます。

  • 上場企業か否か
  • サービス・企業の知名度
  • サービス・事業の運営歴
  • 業績・資金力

数あるバーチャルオフィスのなかで、とくに社会的信用力のある企業が運営するサービスは、以下の2つです。

バーチャルオフィス名特徴月額料金
GMOオフィスサポート 上場企業のGMOインターネットグループ株式会社のグループ会社が運営・660円~
DMMバーチャルオフィス 大手企業のDMM.comが運営・660円~

適切に運営・利用していれば、違法にはならない

この記事では、バーチャルオフィスの利用が違法になるケースを紹介しました。事業利用で違法になるケースは、以下の2つです。

  1. 事務所要件がある業種の場合
  2. 同一住所に同一の商号(法人名)がある場合

上記を除く事業用途での利用は、基本的に違法ではありません。本記事を参考に、バーチャルオフィスを適切に活用しましょう。

以下の記事では、これからバーチャルオフィスを探す方に向け、11のおすすめサービスをまとめています。用途・サービス内容ごとに一覧表で比較していますので、ぜひ選定の参考になさってください。

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