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バーチャルオフィスでも社会保険に加入できる?協会けんぽや組合健保など

高橋 暁人

給与所得者の保険料控除申告書の画像

バーチャルオフィスで法人登記をする場合、社会保険に加入できるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。登記住所に事業の実態が存在しないため、保険加入の要件を満たすのか不安になるものです。

本記事では、バーチャルオフィスでも社会保険に加入できるのかについて、保険の種類と保険者ごとに紹介します。必要書類の一覧や、バーチャルオフィス特有の注意点についてもまとめていますので、ぜひご参考ください。

前提知識!企業が加入申請する社会保険は4種類

企業が加入申請する社会保険の図解

社会保険とは、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の総称です。「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」を狭義の社会保険と呼び、「雇用保険」と「労災保険」を労働保険と言います。

上記のうち、会社の設立時に申請する必要があるのは、「介護保険」を除いた4つの保険です。介護保険については、健康保険・厚生年金保険に加入すると同時に自動加入となるため、申請項目には含まれません。

そのため今回は、健康保険・厚生年金保険と、雇用保険・労災保険に絞って紹介します。

なお、この記事で単に「社会保険」というときは、広義の意味の方を指すことにします。

登記住所がバーチャルオフィスでも社会保険に加入できる?

ここでは、登記住所がバーチャルオフィスでも社会保険に加入できるのかについて、狭義の社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)に分けて紹介します。

健康保険・厚生年金保険

健康保険のイメージ

健康保険の保険者(運営主体)は、主に「協会けんぽ(全国健康保険協会)」と「組合健保(健康保険組合)」の2種類が存在します。一般的には、中小企業が協会けんぽ、中堅・大企業は健康保険組合の健康保険に加入します。

登記住所がバーチャルオフィスの場合は、どちらに加入するかによって対応が異なります。以下、社会保険の種類別におけるバーチャルオフィスの対応可否をまとめました。

保険者の種類加入者の種類(企業規模別)バーチャルオフィスの対応
全国健康保険協会(協会けんぽ)中小企業
健康保険組合(組合健保)中堅・大企業

なお、厚生年金保険の保険者は、政府です。ただ、制度の円滑化を図るために、加入申請を協会けんぽや健康保険組合の手続きとセットで実施しています。

したがって、ここでは健康保険のみに着目し、保険者ごとにバーチャルオフィスでの対応可否を紹介します。

中小企業の多くが加入する「協会けんぽ」であれば可能

協会けんぽは、健康保険組合を設立していない、または参加していない企業が加入する健康保険です。バーチャルオフィス住所の場合でも、協会けんぽへ加入できます。

なぜかというと、従業員が5人以上の企業では、社会保険への強制加入が法律で定められているためです。万が一、協会けんぽがバーチャルオフィスの利用を理由に加入を断れば、矛盾が生じます。

また、日本年金機構の「健康保険・厚生年金保険新規適用届」の資料には、登記住所と事業所所在地が異なる場合について、以下の記述があります。

事業所の所在地が登記上の所在地等と異なる場合は「賃貸借契約書のコピー」など事業所所在地の確認できるものを別途添付してください。

日本年金機構「健康保険・厚生年金保険新規適用届」

つまり、「バーチャルオフィス住所を登記した場合、実際の作業場となる事業所在地を証明すれば良い」と解釈することが可能です。

大企業などが設立する「組合健保」は加入できないケースあり

一方、組合健保は、被保険者700人以上の中堅・大企業が設立する健康保険です。現状、国内には約1,500もの組織が存在し、地域・業種・被保険者数などの規定を満たした企業が加入できる仕組みです。

ただ、登記住所がバーチャルオフィスの場合は、組合健保への加入を断られるケースがあります。この理由は、登記住所での事業実態を証明できないためです。

組合健保は元々、地域・業種・企業という小集団で健康保険事業を行うことを目的とした組織です。バーチャルオフィスのような、登記住所に事業実態がない場合は、組合健保の理念に反するとして、加入を断られるのだと考えられます。

ただし、近年はバーチャルオフィスでの起業が一般的になりました。このことから、将来的には、新規加入を認める組合も増加していくと推測できます。

現状、組合によってバーチャルオフィスでの対応可否が分かれるため、加入を検討する際はホームページをチェックしたり、直接問い合わせたりして確認するのが賢明です。

雇用保険・労災保険

労働保険のイメージ

雇用保険・労災保険は、従業員の福祉・安全を守るための制度です。雇用保険は、原則、雇用形態を問わず、「週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込める従業員」を、1人以上雇用する場合に強制加入が義務付けられます。また、労災保険は、雇用形態・労働時間等に関係なく、1人以上雇用する場合に加入が義務付けられます。

もちろん、バーチャルオフィス住所を利用する場合も例外ではないため、雇用保険・労災保険への加入が必須です。ただし、従業員を在宅勤務させる場合は、雇用保険の必要書類に加えて、「在宅勤務雇用実態証明書」の提出が必要になります。

在宅勤務雇用実態証明書とは、会社と在宅勤務者が請負関係ではなく、雇用関係にあることを証明するための書類です。これを提出していないと、従業員を雇用しているのに請負関係にあるとみなされ、保険の対象外となってしまう可能性があります。

在宅勤務雇用実態証明書の必要書類等について詳しく知りたい方は、以下の厚生労働省のPDF資料をご確認ください。

バーチャルオフィスで社会保険に加入する際にやるべきこと

バーチャルオフィスで社会保険に加入する際には、以下の2つを準備しましょう。

  • 自宅など実態のある事業所の証明書類を用意する
  • 書類の保管・保存場所を決める

自宅など実態のある事業所の証明書類を用意する

賃貸借契約書のイメージ

最初にすべきは、自宅など実態のある事業所の証明書類を用意することです。通常、社会保険への加入手続きでは、登記住所と事業住所を証明します。

登記住所と事業所在地が異なる場合には、実際に事業が行われている物件の賃貸借契約書等が必要です。

事業所の所在地が登記上の所在地等と異なる場合は「賃貸借契約書のコピー」など事業所所在地の確認できるものを別途添付してください。

日本年金機構「健康保険・厚生年金保険新規適用届」

自宅が賃貸住宅の場合には「賃貸契約書のコピー」、持ち家の場合には「公共料金の請求書」を提出するのが一般的です。加入手続をスムーズに済ませるためにも、あらかじめ余裕をもって用意しておきましょう。

書類の保管・保存場所を決める

整理された書類の画像

次に、社会保険に関する書類の保管方法・場所を決めます。社会保険に関する書類は、厚生年金保険法や健康保険法などによって、保管期間が定められています。

雇用保険関連の書類は、従業員の離職後、2年間の保管が義務です。健康保険関連の書類は種類によって異なりますが、5〜10年間です。

社会保険に関する書類の保管は登記住所地での保管が推奨されているため、バーチャルオフィスのプライベートロッカーが望ましいです。ただ、すべての事業者がロッカーサービスを提供しているわけではありません。したがって、保険者に確認のうえ、作業場である自宅にて現物を保管する方法も検討しましょう。

なお、従業員が退職する際や請求手続きでは、年金機構やハローワーク等から保険に関する書類の提出が求められるケースがあります。必要時にすぐ揃えられるよう、社会保険の種類ごとに分けて管理するのがおすすめです。

会社設立後における社会保険関係の届出書類一覧

会社設立後、社会保険関係の届出書類として一般に下記の書類が求められます。

提出先届出書類提出期限
年金事務所
(健康保険・厚生年金保険)
・新規適用届・会社設立から5日以内
・被保険者資格取得届・事実発生から5日以内
・被扶養者(異動)届
※被保険者に扶養者がいる場合
・被保険者を取得した日から5日以内
労働基準監督署
(労災保険)
・適用事業報告書・従業員を雇い入れたあとに遅滞なく
・就業規則
※常時10人以上の従業員を雇っている場合
・すみやかに
・保険関係成立届・従業員を雇い入れた日の翌日から起算して10日以内
・概算保険料申請書・従業員を雇い入れた日の翌日から起算して50日以内
公共職業安定所(ハローワーク)
(雇用保険)
・雇用保険適用事業所設置届・設置日の翌日から起算して10日以内
・雇用保険被保険者資格取得届・資格取得の事実があった日の翌月10日まで

上記以外にも、状況によって必要書類が発生するケースもあります。たとえば、健康保険・厚生年金保険の口座振替を申し込む場合は、「保険料口座振替納付(変更)申出書」が必要です。

スムーズに加入手続きを進めるためにも、窓口などで必要書類を確認しておくと安心です。

バーチャルオフィスで社会保険に加入する際に知っておきたいこと

ここでは、バーチャルオフィスで社会保険に加入する際に役立つ、以下2つの情報を紹介します。

  • 郵送や電子で申請する方法もある
  • 保険料の支払いは口座振替やPay-easyが安心

自宅だけで手続を済ませるのなら、郵送や電子で申請する方法も

社会保険の届出先は、事業所を管轄する年金事務所・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)の3つです。手続きのたびに現地へ出向くのは、多くの時間と手間がかかるため、郵送や電子申請がおすすめです。

郵送の場合は、書類の紛失や個人情報の流出など、郵便トラブルへの対応が必要です。たとえば、特定記録や簡易書留を使用したり、申請書類の枚数を記載した送付状を同封したりすると安心です。また、通知書や控えの返信用に、切手を貼付した返信用封筒を同封しましょう。

電子申請をする場合は、届出先ごとに提出書類の形式を確認してください。なぜかというと、管轄する機関ごとに、書類の形式や使用できる文字が異なるためです。

あらかじめ確認しておかないと、かえって多くの手間と時間がかかるので、事前に届出先のサイトを確認しておきましょう。

口座振替やPay-easyに対応する銀行口座を開設しよう

社会保険料の支払い方法には、主に以下の3つがあります。

  • 金融機関窓口での納付書払い
  • 口座振替
  • 電子納付(Pay-easy)

業務上の手間を考慮すると、金融機関窓口での納付書支払いよりも、口座振替や電子納付の利用がおすすめです。納付書は、毎月20日頃に郵送され、同月の月末日までに社会保険料を支払わなければなりません。

この10日程度の間に金融機関へ行く必要があるため、事業の繁忙期には支払い自体が難しいこともあるでしょう。

一方、口座振替や電子納付(Pay-easy)は、所定の日時に自動支払いが可能です。金融機関の窓口へ出向く必要もなく、業務への負担を軽減できます。

ただ、一部の金融機関は、社会保険料の口座振替や電子納付(Pay-easy)に対応していないため注意が必要です。具体的には、都市銀行やメガバンクはほとんどで対応していますが、多くのネット銀行は非対応です。

現時点で、口座振替に対応するネット銀行は「イオン銀行」の1行のみ、Pay-easyに対応しているのは「 PayPay銀行 」「 楽天銀行 」「 GMOあおぞらネット銀行 」の3行みに限定されるため注意しましょう。

以下の記事では、バーチャルオフィス住所で法人口座を開設できる金融機関や、口座開設時に知っておくべき要点を紹介しています。ネット銀行で口座振替や電子納付をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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バーチャルオフィスの住所でも社会保険に加入できる

OKサインを出すビジネスウーマンの画像

本記事では、バーチャルオフィス住所で社会保険に加入できるのかを紹介しました。以下、社会保険の種類別に対応可否をまとめています。

社会保険の種類バーチャルオフィスの加入可否
健康保険・厚生年金保険
※一部の民間保険者では断られる可能性がある
雇用保険・労災保険

社会保険制度では、従業員数に応じた強制加入が義務付けられているため、基本的にバーチャルオフィスでも加入が可能です。

しかし、一部の民間保険者(組合健保)を選択する場合、事業の実態を証明できないとして、加入を断られるケースがあります。バーチャルオフィス住所で組合健保への加入をお考えの方は、保険者へ問い合わせて加入条件を確認しておくと確実です。

以下の記事では、用途やサービスの特徴ごとに、11のバーチャルオフィス事業者を比較しています。これから事業用住所を借りる方の参考になれば幸いです。

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