近年、バーチャルオフィスでの法人口座の開設が難しいという声を度々耳にします。法人の銀行口座は、実態のある事業所でも開設が難しいと言われているため、バーチャルオフィスを利用する方はなおさら不安に思うのではないでしょうか。
本記事では、バーチャルオフィスでも法人口座を開設できるのかについて、審査時のポイントと合わせて紹介します。
バーチャルオフィスでも法人の銀行口座は開設できる?
ここでは、バーチャルオフィスでも法人の銀行口座を開設できるのかどうかを紹介します。
銀行すべてではないが、開設できる
結論から言うと、すべての銀行ではないものの、バーチャルオフィスを利用した法人口座の開設は可能です。実際に、バーチャルオフィスの住所で銀行口座を開設している会社は多数存在します。
具体的には、メガバンク・都市銀行・ネット銀行等で開設可能なケースが多いです。一方、信用金庫や信用組合などでは、バーチャルオフィス住所に営業実態が無いことを理由に、審査落ちする傾向にあります。
リモートワークの普及により対応する銀行が増えてきた
以前は、バーチャルオフィスの利用が原因で、法人向けの銀行口座の開設を断られるケースが多々ありました。ただ近年は、バーチャルオフィスでの法人口座開設に対応する銀行が増加しています。
なぜかというと、以前に比べバーチャルオフィスの利用者が増加してきたためです。副業が解禁されたり、フリーランスの働き方が定着したりしたことで、バーチャルオフィスの利用者が増加。これに伴い、バーチャルオフィスでの法人口座開設に対応する銀行が増加していると考えられます。
また、銀行としても、利益確保のためには口座数を増やしたいとの思惑があります。そのため、犯罪リスクを考慮した審査の厳格化は進めつつも、バーチャルオフィスの利用者に対応する方針をとっているのです。
バーチャルオフィスでの法人口座開設がしやすい銀行は?
具体的にどの銀行であれば、バーチャルオフィスでの法人口座開設が可能なのでしょうか。当メディア「Mr.バーチャルオフィス」が、実際に電話やメールで問い合わせたり、ホームページを確認したりして、バーチャルオフィスを使った法人口座の開設可否を調査しました。
本章では、銀行・金融機関を以下の項目に分類しています。
- 3大メガバンク
- 都市銀行・大手銀行
- ネット銀行
- 地方銀行
- 信用金庫・信用組合
法人口座の開設には審査があります。本記事の内容は、口座開設を保証するものではない点にご注意ください。
バーチャルオフィスにおすすめの銀行を知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
3大メガバンク
3大メガバンクにおける法人口座の開設可否は、以下のとおりです。
銀行名 | 法人口座開設 | 詳細 |
---|---|---|
三菱UFJ銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスの利用を理由に断ることはない ・いただいた書類を見て総合的に判断する |
三井住友銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスの利用を理由に断ることはない ・いただいた書類を見て総合的に判断する |
みずほ銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスの利用を理由に断ることはない ・バーチャルオフィスとの提携実績あり |
いずれも、バーチャルオフィスの利用を理由に、法人の銀行口座開設を断ることはないとのことです。提出書類を元に総合的に判断されるため、バーチャルオフィスを利用している場合でも審査を通過できる可能性があります。
ただ、一般的にメガバンクでの銀行口座開設は、他の銀行に比べて難しいと言われています。たとえば、開業から間もない場合や事業の実績が少ない場合は、審査を通過するハードルが高いでしょう。
それだけに、無事銀行口座を開設でき、ホームページや請求書等にメガバンクの名前を記載できれば、お客様や取引先からの信用につながるメリットもあります。また、メガバンクは支店やATMが多い点も魅力です。出張先で急な出金を要する場合でも、メガバンクの法人口座であれば対応しやすいでしょう。
その他都市銀行・大手銀行
以下、都市銀行・大手銀行におけるバーチャルオフィスを使った法人口座開設の対応可否です。
銀行名 | 法人口座開設 | 詳細 |
---|---|---|
ゆうちょ銀行 | ? | ・審査基準に関する質問には答えられない ・法人口座の審査について答えられる窓口はない |
りそな銀行 | ? | ・具体的な内容については答えられない ・総合的に判断させていただく |
SBI新生銀行 | ? | ・審査基準に関しての質問については一切答えられない |
全体的に、審査基準に関する回答はいただけませんでした。しかし、バーチャルオフィスのホームページには、上記の都市銀行・大手銀行での開設実績が記載されています。このことから、バーチャルオフィスの利用であっても法人口座を開設できる可能性は高いでしょう。
ただ、知名度がある大手の銀行ということもあり、3大メガバンクと同様に審査が厳しいと言われています。その分、法人口座を開設できれば、取引先からの信用につながります。
ネット銀行
ネット銀行における法人口座開設の対応可否は以下のとおりです。
銀行名 | 法人口座開設 | 詳細 |
---|---|---|
GMOあおぞらネット銀行 | 可能 | ・よくある質問に「バーチャルオフィスでも口座開設いただける」との表記あり ・バーチャルオフィスとの提携実績あり |
楽天銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスの利用を理由に断ることはない ・追加で確認書類が必要 |
住信SBIネット銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスの利用を理由に断ることはない ・バーチャルオフィスとの提携実績あり |
PayPay銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスでも通常と同じ確認・判断方法で審査を実施する |
一部、「 GMOあおぞらネット銀行 」や「 住信SBIネット銀行 」のように、バーチャルオフィスと提携しているネット銀行もあります。また、提携はしていないものの、通常の判断基準と同様に審査を実施する銀行も多い印象です。
ネット銀行は、手数料が安かったり、オンライン機能が充実していたりと、利便性の高さが魅力です。一方ネット銀行は、大手銀行と比べると知名度が低く信用度が低いため、選ぶ際は注意しましょう。
地方銀行
全国的に見てとくに規模の大きな地方銀行の、口座開設可否を以下にまとめました。
銀行名 | 法人口座開設 | 詳細 |
---|---|---|
福岡銀行 | 可能 | ・過去に口座開設の実績あり ・バーチャルオフィスの利用を理由に断ることはない |
横浜銀行 | ? | ・審査に関わることについては答えられない |
千葉銀行 | 可能 | ・バーチャルオフィスを理由に断ることはない ・ただし、用意いただく書類が通常よりも多くなる ・過去に口座開設実績あり |
静岡銀行 | ? | ・明確にお答えすることはできない ・事業実態など、いただいた書類を見て総合的に判断する |
地方銀行は、地域の企業・住民を支えて地域経済の活性化を目指す点が特徴です。そのため、事業所がある地域の地方銀行であれば、バーチャルオフィスでも法人口座を開設しやすいでしょう。
また、地方銀行は、地域の中小企業を積極的に支援しています。たとえば、融資の相談やビジネス情報の提供など、事業に役立つサポートが期待できます。
そのため、地方銀行で銀行口座を開設する場合は、事業所の地域にある銀行を利用するのがおすすめです。
信用金庫・信用組合
以下、信用金庫・信用組合におけるバーチャルオフィスを使った法人口座開設の対応可否です。
銀行名 | 法人口座開設 | 詳細 |
---|---|---|
京都中央信用金庫 | 可能 | ・バーチャルオフィスであることを理由に断ることはない ・商売の内容やオフィスの設置、従業員の雇入れなども踏まえ総合的に判断する ・通常の審査よりも確認事項が多く生じる |
城南信用金庫 | 不可 | ・登記住所に営業実態がない場合は審査でお断りしている |
岡崎信用金庫 | 不可 | ・登記住所に営業実態がない場合は審査でお断りしている |
多摩信用金庫 | 不可 | ・登記住所に営業実態がない場合は審査でお断りしている |
全体的に見ると、バーチャルオフィスの利用を理由に、法人口座開設を断っている傾向があります。
信用金庫は、地域の住民・中小企業がお互いに支え合って地域の繁栄を図ることを目的とした協同組織です。バーチャルオフィスは住所地での営業実態がないため、協同組織の理念に該当しないと判断されているためだと考えられます。
実際に法人口座の開設実績があるバーチャルオフィス・銀行一覧
実際にバーチャルの公式サイトを確認し、各バーチャルオフィスにおける法人口座の開設実績を調べました。
以下、各バーチャルオフィスにおける法人口座の開設実績とサポートサービスの詳細です。
サービス名 | 法人口座の開設実績 (公式記載のみ) | 法人口座の開設サポート |
---|---|---|
GMOオフィスサポート | ・GMOあおぞらネット銀行 ・みずほ銀行 ・横浜銀行 ・三菱UFJ銀行 ・住信SBIネット銀行 ・きらぼし銀行 ・三井住友銀行 ・楽天銀行 ・北海道銀行 ・ゆうちょ銀行 ・PayPay銀行 ・東京シティ信用金庫 ・りそな銀行 ・大和ネクスト銀行 ・西中国信用金庫 | ※アカウント登録情報を、GMOあおぞらネット銀行へ連携させて申込み可能 |
DMMバーチャルオフィス | ・みずほ銀行 ・三菱UFJ銀行 ・ゆうちょ銀行 ・りそな銀行 ・住友SBIネット銀行 ・楽天銀行 ・PayPay銀行 ・GMOあおぞらネット銀行 | |
METSバーチャルオフィス | ・みずほ銀行 ・三菱UFJ銀行 ・三井住友銀行 ・りそな銀行 ・ゆうちょ銀行 ・楽天銀行 ・住信SBIネット銀行 ・PayPay銀行 ・GMOあおぞらネット銀行 ・その他:各種地方銀行、各種信用金庫、各種信用組合 | |
京都朱雀スタジオ | ・京都銀行 ・京都中央信用金庫 ・京都信用金庫 ・みずほ銀行 ・三菱UFJ銀行 ・三井住友銀行 ・ゆうちょ銀行 ・GMOあおぞらネット銀行 ・住友SBIネット銀行 ・PayPay銀行 | |
バーチャルオフィス1 | ・三井住友銀行 ・りそな銀行 ・住信SBIネット銀行 ・楽天銀行 ・GMOあおぞらネット銀行 | |
レゾナンス | ・みずほ銀行 ・GMOあおぞらネット銀行 ・住信SBIネット銀行 ・PayPay銀行 | ※みずほ銀行、GMOあおぞらネット銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行の法人口座開設紹介制度 |
ユナイテッドオフィス | ・三井住友銀行 ・みずほ銀行 ・りそな銀行 ・ゆうちょ銀行 | |
ワンストップビジネスセンター | ・みずほ銀行 ※GMOあおぞらネット銀行も実績がある可能性あり | ※みずほ銀行の専用受付窓口(青山本店) |
Karigo | ・公式記載なし | |
NAWABARI | ・三井住友銀行 ・みずほ銀行 ・三菱UFJ銀行 ・ゆうちょ銀行 ・GMOあおぞらネット銀行 ・住信SBIネット銀行 ・楽天銀行 ・PayPay銀行 |
大手企業が運営する GMOオフィスサポート や DMMバーチャルオフィス などは、法人口座の開設実績が豊富です。なかでもGMOオフィスサポートは、三菱UFJ銀行やみずほ銀行などのメガバンク以外にも、きらぼし銀行や東京シティ信用金庫など、東京を拠点とする銀行の開設実績が豊富です。
なお、法人口座開設時の手続きに不安を感じている方、手続きの手間を少しでも減らしたい方は、「 GMOオフィスサポート 」や「 レゾナンス 」のような開設サポートを提供するサービスが安心でしょう。バーチャルオフィスに登録した情報を提携先の銀行へ連携したり、専用の開設窓口から申し込んだりできます。
バーチャルオフィスの法人口座開設でよくある質問
ここでは、バーチャルオフィスの法人口座開設でよくある質問とその回答を紹介します。
バーチャルオフィスによって審査の通過率は変わりますか?
基本的に、バーチャルオフィスによって審査の通過率が変わることはありません。しかし、過去にバーチャルオフィスの住所が犯罪や詐欺に悪用されていた場合、審査に落ちる恐れがあります。
なぜかというと、銀行が、過去に犯罪があった住所のデータと照らし合わせて、犯罪利用との関連性を判断している可能性があるためです。
銀行の審査基準は明かされていませんが、提出書類などの限られた情報で企業の信用力を判断します。もちろん実績のある企業であれば、実態や信用力を判断できますが、起業して間もない企業は情報が少なく、実態を掴みづらいでしょう。過去の犯罪との関係性を証明できないことで、審査に落ちる可能性があります。
したがって、基本的に審査の通過率は変わらないけれども、犯罪利用の経歴があったバーチャルオフィス住所の場合、審査に影響する可能性がある、といえます。
審査時に特別必要なものはありますか?
銀行によっても異なりますが、バーチャルオフィスを利用して法人口座を開設する場合は、「事業実態が確認できる書類」を求められることがあります。たとえば、法人名が記載された以下のような書類です。
- 発注書
- 請求書
- 納品書
- 業務委託契約書
- 工事請負契約書
- 売買契約書
なお、個人事業主時代の書類は、法人の事業実態にみなされないため、必ず法人設立後の法人名が記載されたものを提出しましょう。銀行によって、必要な書類やそうでないものがあるので、詳しくは電話などで確認することをおすすめします。
転送不要の簡易書留は受け取ってくれますか?
法人口座の開設手続き中に、申し込み書類やキャッシュカードなどがバーチャルオフィスの住所宛に届きます。そのときに「転送不要の簡易書留」で郵便物が送られてくるのです。
転送不要の簡易書留とは、宛先の住所に宛名本人が住んでいない場合、転送せずに差出人へ返還するものです。重要な契約書や申請書類等に用いられます。
法人登記に対応していたり、法人口座の開設実績があったりするバーチャルオフィスであれば、転送不要の簡易書留郵便を受け取ってくれます。基本的には無料で対応してもらえますが、バーチャルオフィスによっては受け取りサイン等の業務で別途料金が発生するため注意が必要です。
融資は受けられますか?
バーチャルオフィスであっても、金融機関からの融資を受けることは可能です。ただし、以下2つの条件を満たしている必要があります。
- その銀行が中小企業の融資に対応していること
- 融資を受ける銀行の口座を開設・保有していること
たとえば、信用金庫・組合は、そもそもバーチャルオフィスでの口座開設に対応していないところが多いため、融資審査を受けること自体が難しいです。また、メガバンクは大企業への融資がメインのため、口座開設はできても直接の融資は基本的に受けられません。
地方銀行やその他の都市銀行については、対応がまちまちです。ご自身が開設を検討している銀行へ直接確認してみましょう。
なお、民間銀行以外から融資を受ける手段として、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や、地方自治体の「制度融資」を活用する方法があります。これらは、バーチャルオフィスに対応しているだけでなく、民間銀行よりも良い条件で借り入れることが可能です。
詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考ください。
バーチャルオフィスで法人の銀行口座を開設するポイント
ここでは、バーチャルオフィスで法人の銀行口座を開設する際に押さえておくべきポイントを紹介します。
重要度の低い銀行から順に口座開設実績を作る
最終的に都市銀・メガバンクでの法人口座開設を考えている場合、重要度が低い銀行から順に銀行口座の開設実績を作るのがおすすめです。重要度が低い銀行とは、知名度の低いネット銀行など、法人口座を開設した後に自社の信用力につながりにくい銀行のことです。
たとえば、最終的に都市銀行・メガバンクを目指す場合は、以下の順で開設実績を作ります。
- ネット銀行
- 地方銀行
- 都市銀行・メガバンク
法人口座の開設は審査が厳しいため、単に必要書類を揃えるだけでなく、事業の実態が伝わりやすいよう記載内容を充実させることが大切です。そのため、まずは重要度の低い銀行で開設実績を作り、その都度書類の内容を修正していくことで、都市銀・メガバンクなどの重要な口座開設に安心して臨めるでしょう。
登記住所に建物名と部屋番号までを登録しておく
法人登記の住所に建物名と部屋番号まで登録しておくと安心です。実際にみずほ銀行へ問い合わせた際、「登記住所に建物の名前や部屋番号まで登録しておくようにしてください」との返答をいただきました。
これは、登記住所宛に申込書などの転送不要の簡易書留を送付した際に、不達とならないようにするためだと考えられます。
今のところ、番地までしか登録していないために、審査落ちになったという事例は耳にしたことがありません。しかし、銀行に不信感を抱かせないためにも、建物名や部屋番号も登記しておくようにしましょう。
銀行側の審査基準が明かされていない以上、法人口座の開設ではマイナスな評価を受けないことが最も効果的な対策です。とくに、法人設立直後は審査落ちになりやすいため、できる限りの準備をしておくと安心です。
バーチャルオフィスで法人口座を開設してみよう!
本記事では、バーチャルオフィスでも法人口座を開設できるのかについて、審査時のポイントと合わせて紹介しました。
結論をいうと、すべての銀行ではないものの、バーチャルオフィスでも法人の銀行口座開設は可能です。実際にバーチャルオフィスのサイトを確認すると、都市銀行・メガバンクの口座開設実績も記載されています。
ただ、犯罪防止に向けた処置により、法人口座の開設自体が年々難しくなっている実情があります。そのため、できる限りの準備を整えてから臨むことが大切です。