「住所だけ借りよう」と思った際にまず思いつくのが、友人・親族ではないでしょうか。それが難しい場合は、ネットを使って探される方も多いと思います。
しかし、個人間での住所の貸し借りは非常に危険です。場合によっては、法律に違反する恐れもあります。
この記事では、個人間の住所貸しのリスクと適切な借り方を紹介します。リスクやトラブルを避けつつ住所を取得したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
個人間の「住所貸します」は、危険やトラブル、デメリットがいっぱい!
ここでは、個人間で住所を貸し借りした場合のリスクを紹介します。貸した側・借りた側の双方にデメリットが生じるので、基本は行わないのが賢明です。
賃貸物件の住所を無断で貸し借りすると違法になる可能性がある
賃貸物件の住所を大家に無断で貸し借りするのは、法律違反です。また、この法律違反を犯すと、住所を貸した人が賃貸契約を解除される恐れがあります。
以下、該当する民法の条文です。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
e-Gov法令検索「民法」
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
なお、賃貸物件の住所を無断で貸し借りした場合、貸した側(転貸人)のみならず、借りた側(転借人)にも責任を追及される恐れがあります。具体的には、賃料相当の損害賠償が請求される可能性があります。
賃貸借契約が解除されていない場合でも、賃貸人は、賃借人から賃料の支払を受けた等特別の事情のない限り、賃借権の無断譲受人である目的物の占有者に対し、賃料相当の損害賠償の請求をすることができる。
裁判所「裁判例結果詳細」
貸主とトラブルに発展する恐れがある
借りた住所で、住民票登録した場合や口座開設などの申請をした場合、自分宛の郵便物が貸主の住所へ届きます。主な郵便物は以下のとおりです。
- 税金・社会保険関係書類
- 運転免許証
- クレジットカード
- 銀行関係書類
- 消費者金融関係書類
- 選挙のお知らせ
- 裁判関係の書類
- チラシ・パンフレット
たとえば、以下のようなトラブル・リスクに直面するリスクがあります。
- 届いた書類を興味本位で勝手に見られる
- 家族や金銭などのプライバシー情報が漏れる
- チラシやパンフレットの量が多くなり、迷惑がかかる
- 郵便物を直接取りに行けない場合、所定の住所へ転送してもらう手間が発生する
最悪の場合、こうしたトラブルから、住所の貸し借りが中断されたり、別のトラブルに発展したりする可能性があるのです。
個人が格安で住所を借りられるサービス3つ
個人が安全かつ格安で住所を借りられるサービスは、以下の3つです。ここでは、各サービスの概要と特徴を紹介します。
手段 | 住民票登録 | 主な用途 | 料金相場/月 |
---|---|---|---|
シェアハウス | ・住居利用 | ・40,000~60,000円 | |
私設私書箱 | ・郵便物の受け取り | ・1,500~3,000円 | |
バーチャルオフィス | ・事業用住所の確保、郵便物受け取り | ・500~1,500円 |
1.住民票登録なら「シェアハウス」
住民票登録や住居利用が目的なら、シェアハウスがおすすめです。
シェアハウスとは、1つの建物を複数人で共同利用する物件のことです。一般的には、自分用の個室もしくはベッドスペースがあり、リビングやトイレなどを共有します。
シェアハウスは、一般的な賃貸物件に比べ低価格で借りられる点が魅力です。東京都内でも料金相場は、40,000〜60,000円です。
総体的に見ると、シェアハウスの入居審査はゆるいと言われています。これは、一般的に社会的信用が低いとされるフリーランスやフリーターをターゲットにしているためだと考えられます。
ただし、入居審査では支払い能力以外にも、人柄を重視される点に注意が必要です。入居申し込み時のやり取りで、基本的なコミュニケーションや協調性が見られます。大家や管理会社とのやり取りでは、言葉使いや態度を意識し好印象を与えましょう。
2.荷物の受け取り先なら「私設私書箱」
郵便物の受け取り用住所だけ欲しい方には、私設私書箱が適しています。
私設私書箱とは、自宅住所以外に郵便物の受け取り場所を設けられるサービスです。宛先として借りた住所を使用すれば、プライバシーを保護しつつ郵便物を受け取れます。
なお、私設私書箱に似ているサービスに「郵便私書箱」があります。こちらは無料ですが、以下の条件を満たさないと利用できません。
郵便局「私書箱は誰でも利用することができますか?」
- おおむね毎日、郵便物等の配達を受ける方
- 私書箱を六カ月以上使用する方
- 郵便物等を遅滞なく受け取ることができる方
条件が非常に厳しいため、ほとんどの人が有料の私設私書箱を利用しています。自分の好きなタイミングで回収できたり、サービスを終了できたりするのが魅力です。
また、受付スタッフを配置し、簡易書留の受け取りや郵便物転送に対応しているサービスも一部であります。しかし、銀行口座やクレジットカードの申請住所として利用できないうえに、キャッシュカードやクレジットカードの受け取りにも対応していないことがほとんどです。
そのほかにも、受け取り対象外の郵便物があるため、利用時には各サービスの公式サイトを確認しましょう。
3.事業用としての利用なら「バーチャルオフィス」
事業目的で住所を借りるなら、バーチャルオフィスがおすすめです。
バーチャルオフィスは、法人登記や開業届など、事業目的で使用する住所を借りられるサービスです。郵便物の受け取り・転送や電話番号の貸し出しを行う事業者もあります。
また、私設私書箱とは異なり、事業用であれば銀行口座の開設やクレジットカードの申請、書類受け取りが可能です。住所のみなら月額500円程度とリーズナブルな点も魅力です。
ただ、バーチャルオフィス住所は、あくまでも事業用途でのみ使用できます。携帯電話の契約住所や、個人名義・用途での銀行口座には使用できません。
どうしても難しい場合は、近くの役所・役場へ相談しよう
前述のサービス利用がどうしても難しい場合は、近くの役所へ相談しましょう。住宅の確保や家賃の困りごとなどをサポートしてもらえます。
たとえば、地域の関係機関やネットワークと連携し、格安で借りられる物件を紹介してくれるなどです。各自治体が独自の窓口を設けているため、役所へ相談すると、担当の課を紹介してもらえます。
なお、東京都の場合、TOKYOチャレンジネットというプロジェクトが発足しています。これは、都内に生活実態がある方を対象に、生活・居住・就労を総合的に支援する取り組みです。
窓口のみならず、電話での相談も受け付けています。困り事がある方は、自分だけで抱え込まず、ぜひ相談してみてください。
窓口:〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-44-1 東京都健康プラザハイジア3F
電話番号:0120-874-225
0120-874-505(女性専用ダイヤル)
※地域の福祉事務所でも受け付けています。
参考記事
個人間での住所貸しは危険なので、サービスを利用しよう
この記事では、個人間で住所を貸し借りするリスクを紹介しました。とくに、賃貸物件を大家の同意なく貸し借りするのは民法違反です。
貸した側だけでなく、借りた側にも責任が追及されます。法律違反のリスクやトラブルを回避するためにも、住所貸しや住民票登録ができるサービスを利用しましょう。
以下の記事では、事業用の住所をお探しの方に向け、11のバーチャルオフィスを比較しています。法人のみならず、個人事業主でも利用できますので、興味がある方はサービス選びの参考になさってください。