バーチャルオフィスの利用料を仕訳する際、「どの勘定科目を使えば良いのか?」と悩みがちです。また、オプションサービスを利用しているとなれば、「一括で計上して良いものか?」と不安になるでしょう。
本記事では、バーチャルオフィスで使用する勘定科目を、サービス内容ごとに紹介します。なお、ここで紹介する勘定科目・仕訳方法は、個人・法人のどちらにも共通する内容です。
バーチャルオフィス利用時に使用する勘定科目
一般的に、バーチャルオフィス利用時に発生する基本料金は、「支払手数料」で計上します。一見すると「賃借料」が正しいようにも思いますが、実際の不動産や物件を借りるわけではないので当てはまりません。
なお、郵便物転送や電話転送などのオプションサービスを使用する場合は、それぞれに合った科目を使用します。
ただし、領収書や請求書の項目が、「バーチャルオフィス利用費」のようにひとまとめになっているケースもあります。この場合は、わざわざ細かく仕分けする必要はなく、一括で「支払手数料」として計上します。
本章では、バーチャルオフィスの契約時・利用中のシーン別に分けて、使用する勘定科目を紹介します。
契約時に使用する勘定科目
バーチャルオフィスの契約時に発生する勘定科目と費用項目の詳細は、以下のとおりです。
勘定科目 | 費用項目 |
---|---|
支払手数料 | ・基本料金(前払い分) ・事務手数料 |
諸会費 | 入会金 |
差入保証金 | 保証金 |
前払費用 (通信費) | デポジット |
デポジットについては、基本的に「前払費用」の科目を使用します。似た勘定科目に「預け金」がありますが、こちらは返還されるのが前提で使用するので、不適当です。
なお、デポジットが概ね月内になくなることが多いときは、預け入れたタイミングで「通信費」として計上することも可能です。詳しく知りたい方は、以下の税理士ドットコムの記事が参考になりますので、ぜひご確認ください。
契約中に使用する勘定科目
続いて、バーチャルオフィス利用中に発生する料金の勘定科目を紹介します。
基本料金・オプション料金
バーチャルオフィスの基本料金・オプション料金の勘定科目・費用項目は、以下のとおりです。
勘定科目 | 費用項目 |
---|---|
支払手数料 | 基本料金 ・住所貸しのみ基本プラン ・郵便物転送付き基本プラン ・電話転送付き基本プラン |
通信費 | ・郵便物転送料金(オプションの場合) ・手数料 |
・電話転送料金(オプションの場合) ・通信料 | |
・FAX利用料 ・通信料 | |
会議費 | 会議室利用料 |
外注費 | ・電話秘書代行利用料 ・オーバーコール料金 |
郵便物の写真通知料 | |
郵便物への宛名追加料 | |
保管料 | 貸しロッカー料 |
一部のバーチャルオフィスでは、「電話転送」や「電話秘書代行」を基本プランとして提供しています。この場合は、基本料金部分を「支払手数料」で計上し、別途で発生する手数料や通信料を「通信費」で計上します。
一方、「電話転送」や「電話秘書代行」がオプションとして提供される場合は、オプション料金と手数料・通信料を「通信費」で計上します。
その他依頼・代行料金
住所貸しや郵便物転送のほかにも、さまざまな代行サービスを提供している事業者もあります。以下、一般的なバーチャルオフィスが提供する代行サービスの勘定科目と費用項目です。
勘定科目 | 費用項目 |
---|---|
支払手数料 | 会社設立代行料 |
広告宣伝費 | ホームページ作成料 |
外注費 | 記帳代行サービス料 |
補助金・助成金の申請代行料 | |
事務用品費 | 印鑑購入費 |
バーチャルオフィス利用時の仕訳方法
ここでは、バーチャルオフィス契約時・利用時に使用する勘定科目を使い、仕訳の方法を紹介します。まずは、以下の料金を普通預金口座で支払った場合の仕訳例です。
- 入会金:3,800円
- 保証金:5,000円
- 基本料金(1年払い):19,800円
- 電話転送料金(オプション):2,200円
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
入会金 | 諸会費 | 3,800円 | 普通預金 | 3,800円 |
保証金 | 差入保証金 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 |
基本料金 | 支払手数料 | 19,800円 | 普通預金 | 19,800円 |
電話転送料金 | 通信費 | 2,200円 | 普通預金 | 2,200円 |
また、以下の条件のように、郵便物転送・電話転送が基本プランに含まれている場合の仕訳方法は、次のとおりです。
【入会時】
- 入会金:5,500円
- 郵便物・電話転送プランの基本料金(1年払い):38,280円
【利用中】
- 郵便物転送料金(590×4回):2,360円
- 通話料金:1,760円
- 貸しロッカー料:2,200円
【入会時】
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
入会金 | 支払手数料 | 5,500円 | 普通預金 | 5,500円 |
基本ka料金 | 支払手数料 | 38,280円 | 普通預金 | 38,280円 |
【利用中】
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
郵便物転送料金 | 通信費 | 2,360円 | 普通預金 | 2,360円 |
通話料金 | 通信費 | 1,760円 | 普通預金 | 1,760円 |
貸しロッカー料 | 保管料 | 2,200円 | 普通預金 | 2,200円 |
バーチャルオフィスで仕訳をする際の注意点
ここでは、バーチャルオフィスの料金を仕訳する際の注意点を紹介します。
バーチャルオフィス利用料は課税対象
バーチャルオフィス利用料は、消費税の課税対象です。国税庁の情報によると、土地と住宅の貸し付けは非課税取引に該当します。
しかし、バーチャルオフィスの住所貸しは、契約時に賃貸借契約書を交わさないため、土地や住宅の貸付に該当しません。つまり税務上、サービス(商品)として扱われるため、スーパーなどで売られている野菜やお肉などと同様、消費税の課税対象になります。
年度をまたいだ勘定科目の変更はNG
一度使用した勘定科目は、翌年度以降も継続して使用しましょう。これは、企業会計原則のひとつである「継続性の原則」にのっとるためです。
継続性の原則とは、財務諸表に一貫性を持たせ、意図的な利益操作や決算書の信憑性低下を排除するためのものです。仮に勘定科目が一定でなければ、決算書を適切に分析・比較できなくなることから、一度決めた勘定科目を継続して使用するよう定めています。
なお勘定科目では、中身をより細かく分類するための「補助科目」が使用できます。通常、バーチャルオフィスの利用料には「支払手数料」を使用します。
補助科目を使用する場合は、「バーチャルオフィス基本料金」や「住所貸し・郵便物転送基本料金」といった細かな科目を設定できます。これにより、税金計算が容易になったり、管理上の手間を軽減しやすくなったりします。
正しい勘定科目を使って仕訳しよう!
本記事では、バーチャルオフィスで使用する勘定科目を紹介しました。以下、費用項目別に、使用すべき科目名をまとめています。
勘定科目 | 費用項目 |
---|---|
支払手数料 | 基本料金 ・住所貸しのみ基本プラン ・郵便物転送付き基本プラン ・電話転送付き基本プラン |
通信費 | ・郵便物転送料金(オプションの場合) ・手数料 |
・電話転送料金(オプションの場合) ・通信料 | |
・FAX利用料・通信料 | |
会議費 | 会議室利用料 |
外注費 | ・電話秘書代行利用料 ・オーバーコール料金 |
郵便物の写真通知料 | |
郵便物への宛名追加料 | |
保管料 | 貸しロッカー料 |
ぜひ、本記事の内容を参考にしていただき、正しい勘定科目で仕訳をしてみてください。